第125章

北村健は指を止め、ふと小林進を見た。何か思い出したのか、彼の瞳の色が少し暗くなった。「彼女はずいぶん早く逃げ出したな」

山田澪は病院で点滴を受けるため急いでいた。定時に帰れるよう、昼食も取らずに資料整理を終わらせたのだ。

彼女は医師の処方箋を持って薬を受け取り、点滴室へ向かった。

昨日点滴を受けたおかげで、今日は下腹部の痛みがやや和らいでいた。まだ鈍い痛みはあるものの、鎮痛剤なしでも耐えられるようになっていた。

山田澪は空いている席を見つけて座り、点滴を受け始めた。この時間帯は人が少なくなかったが、幸い付き添いは入れないため、みな一人で静かに点滴を受けていた。

山田澪は携帯電話を取...

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